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  •  百武彗星(8) 彗星掃索家 藤川繁久さんからの寄稿 平成27年8月1日


    今回は、現役の彗星掃索家として多くの彗星を発見したことで著名な藤川繁久さんに彗星掃索活動について 語っていただきます。


    私の知る藤川さん、四国天文協会香川県支部の例会でよくお会いしいろいろとご指導を受けています。

    さすがに数々の彗星を発見されるなどの偉業を達成されている方です。議論をするときの目はやはり彗星掃索家、 気骨のある精神の方だと感じます。


      


       四国天文協会香川県支部例会で会員の皆さんと談笑する藤川さんです。奥中央の方




    (寄稿文)


                       彗星掃索について



    私達アマチュアにとって新彗星の発見は、憧れの的であり誰しも一度は夢見るのではないでしょうか。

    私が掃索を始めた動機は、関 勉著書「未知の星を求めて」に魅せられてこの道に入りました。


    1 天体掃索家として


    掃索は何かの片手まで出来るようなものではありません。

    掃索はマラソンとよく似ています。心身ともに相当厳しいものがあります。

    人生のライフワークとして長期継続して行かねばならず、その為器材や技術面以上に心の支えが特に大事になってき ます。

    これらが旨くクリア出来ないと継続は難しいかもしれません。


    結果を求め、結論を求めると人生は長続きしない。(発見を目的としない)

    ライバル意識を持たない、何時も自然体で専念できるよう日常生活に気をつけます。

    掃索時間は自分の境遇の中から考え出すもの、旨い話は無いです。

    掃索範囲は柳の下のどじょうを狙うのも良いですが、私は固定観念をはずして、全天を目標にしています。

    掃索機材は可能な限り自作が望ましいです、これは長期飽きずに使用する為の知恵です。

    自作に当たっては、中口径の反射鏡も選択肢の一つと思っています。

    眼視の対象となる既知の彗星の情報は常に把握しておきます。


    彗星天体は一般に淡く拡散していて大変見ずらいです。

    現状から考えて眼視の限界と言われている11等級を狙わないと希少なチャンスは更に少くなるかもしれません。

    このクラスの光度になりますと、観望程度の視力ではどうにもなりません。

    目の訓練は避けられません、私はしし座、乙女座、髪の毛座、北斗七星辺りの微光の島宇宙の宝庫を可能な限り、 流しの掃天で鍛えてきました。

    (ファインダで位置を求めてそのものを凝視するのとは意味が違います。)


    雲状天体のリストは自分で順次仕上げてゆきます。


    彗星状天体に気付いたならば、先ず高倍率に切り替えてそのイメージを確かめます。

    極接近した微光の2〜3の恒星が低倍率では雲状に見えることがあります、又この時背後の恒星との 位置関係に注意しておきます。

    彗星であれば太陽との離隔にもよりますが、15分位あればそれとなく移動は分かります、但し訓練が必要です。


    新彗星と判断したならば一刻も早く通報しなければなりませんが、その通報先は人それぞれです。

    私は、国立天文台新天体情報センターの窓口に連絡をとっています。(留守番電話0422−34−3691)

    通報の仕方、その内容についてはネット等で前もって調べておきます。


    2 自動掃天プロジェクトの時代を迎えて


    1960年〜1990年前半までに続いた「彗星王国日本」も1994年7月にSL第九彗星が、木星に衝突と 一大事があった事記憶に新しいと思います。

    この事があって以来地球近傍の微小天体(彗星、小惑星等)の地球への衝突が現実の問題となって、その対策として 世界的にプロによる自動掃天プロジェクトが始動して、極めて暗い微光の彗星が根こそぎ発見されるようになり、アマチュアの 活躍舞台は無くなったように思えました。

    しかし、関先生が何時も申されています、プロによる自動サーベイ恐れるなかれ、事実その網の目をかいくぐって アマチュアの発見が今もなされています。

    ただかっての発見ラッシュの再現は難しい時代になったと思っていますがいかがでしょうか。


    3 眼視から冷却CCDカメラへ


    私は10年程前に眼視から冷却CCDカメラに切りかえました。

    ハイテク音痴な私には未だ十分に使えこなしができていませんが、f105ミリF3の小さなカメラで全天掃天をやって きました。

    これらの画像の中には幾つもの周期彗星が撮れていますが、撮像光度11等級の彗星ですと2〜3′角の尾の光芒が 見られます。

    現在f120ミリF3.5で新たなレンズで再度全天掃天を行っています。

    今年の2月に流しの掃天中に周期彗星32P/ComasSolaコマス、ソラが入ってきました。

    撮像光度14.2等、これを眼視で補捉するのは困難と思いますが、条件さえ良ければ小さなカメラでも可能です。

    個人的には時代の波である冷却CCDカメラの活用が良いと思っています。


    4 掃索に生涯をかけて


    いずれにしましても掃索は生涯をかけてやりぬくものです、この気持ちが大切です。

    事は容易ではありませんが、日々の掃天作業において、いつも男の大きな夢と希望とロマンがあります。

    地味な掃索もやってみれば実に面白く、楽しいです。


    それではご健闘をお祈りいたします。




                                    彗星掃索家   藤川繁久




      

    百武さんが生涯をかけた彗星掃索。

    藤川さんに、ご自身の彗星掃索活動や彗星掃索を目指す方へ指針となるお話をしていただきました。

    「いつも男の大きな夢と希望とロマン」ほんとうにいい言葉ですね。


     

     連載 星空に夢を求めて「百武彗星」


    過去の連載記事は、こちらからご覧いただけます。


    星空に夢を求めて(百武彗星9)百武彗星がもたらしたもの

    星空に夢を求めて(百武彗星8)藤川繁久氏の寄稿文

    星空に夢を求めて(百武彗星7)彗星掃索家藤川繁久氏

    星空に夢を求めて(百武彗星6)吉川善久氏の寄稿文A

    星空に夢を求めて(百武彗星5)吉川善久氏の寄稿文@

    星空に夢を求めて(百武彗星4)上田聡氏の寄稿文

    星空に夢を求めて(百武彗星3)天体望遠鏡博物館

    星空に夢を求めて(百武彗星2)歴史に残る大彗星

    星空に夢を求めて(百武彗星1)プロローグ

     

    日々の日記 四季の高松


    四季折々の身近なスケッチを日記風に記載しています


        

    四季の高松

     

     

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