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星空に夢を求めて(百武彗星4) 上田 聡さんからの寄稿 平成27年6月22日
今回は、百武裕史さんが鹿児島県での天文活動の同志だった上田観測所の上田聡さん(現スターランド AIRA館長)から、百武さんを語っていただきました。
私の天文道標たる「百武 裕史氏」
1994年頃だったと思いますが、懇意にさせてもらっているヨシカワ光器の吉川さんから、 「今度、そっちへおもしろい人が行くから今後ともよろしく」という連絡が入りました。
その後、百武さんとお会いし、私の鹿児島県天体写真協会に入会してもらい、星を通しての 深いお付き合いが始まりました。
吉川さんの言われるとおり、百武さんはとてもユニークで、話のバリエーションがとても広く、人生を楽しく生きて おられる様子が随所にうかがえる方でした。また、自分の考えや信念をしっかり持っておられ、彗星の掃索にかける想いは 並々ならぬものを日ごろから感じ取れる方でした。
彗星の掃索のためのスケジュール管理はとても綿密で、明け方の観測の時間をとても大切にされていました。 今、考えると毎日のように明け方観測して、その後1時間の通勤時間をかけて仕事をする。その気力と体力はどこからきていたのか。 あるシーズンだけなら理解できますが、天気が良ければ、ほぼ毎日のことですから。
百武さんは人間的にもとてもおおらかで、物の考え方、見解が巨視的であり、場面によっては微視的な見方も鋭くされる方で、 私としては天文の世界の師範として、人生の先輩としてとてもオーラを感じる方でした。
苦労が実り、2つの彗星を発見されてから、鹿児島県の姶良町(現姶良市)のスターランドAIRAの館長に就任 されました。世界的に著名人となり、多くの講演依頼や取材等で多忙な状況になられても、私たち若輩者の支援、助言は 全く依然と変わりなく、おごらず、気さくにお付き合いいただきました。
私自身、百武さんから学んだことは山ほどあります。いっしょにオーストラリアへ写真撮影に行ったり、内之浦から 発射される「のぞみ」の撮影や諸流星群の観測などにお供したりと、短い間でしたが本当に密度の濃いお付き合いができま した。いろいろな撮影手法や将来の機材論などを勉強させてもらいました。特に、撮影した写真の作品としての価値感について かなり影響を受けました。私は天文ガイドをはじめとする天文誌や諸コンテストなどで写真の入選点数は100点を超える 実績を持っていたのですが、百武さんの感覚ははるかにそのうえをいっていて、目から鱗状態しきりでした。
また、酒好きな私はよく百武さんから「ただの酒飲みになるな」と指導されてきました。また、「最近、太りすぎて きたから運動をして少しやせないと」などと、生活上のこともよく注意していただきました。それにしても、本当に電話 での長話はどれくらいやったでしょうか。
今、私は10年ぶりに天文の世界に再度足を踏み入れたところです。百武さんがお亡くなりになられて、かなりの ショックが続いたのと、仕事上のことがあって天文から離れていました。もう、もどれないかもと思っていましたが、 縁あってスターランドAIRAに勤めることとなり、管内にある百武さんのたくさんの足跡が私を後押ししてくれている ようです。若い頃と同等の観測頻度まで何とか戻してきました。
私の目標はまだ語れませんが、百武さんのようにスケジュール管理を怠らず、観測することを生活の主軸として いきます。そのために氏から得た教訓である「日々の努力、努力、努力・・・絶対努力・・・結果につながるから」 を実践していきたいと思います。
スターアイランドAIRA館長 上田 聡
画像は、スターアイランドAIRAのホームページから
連載 星空に夢を求めて「百武彗星」
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日々の日記 四季の高松
四季折々の身近なスケッチを日記風に記載しています